こんにちは。関口詩乃です。
先日、高校1年生のSちゃんと、都立高入試を控えたMちゃんに会う機会がありました。
Mちゃんの志望校はSちゃんが在学しているX高校。
都立のチャレンジスクール(※1)です。
※1:チャレンジスクール:小・中学校時代に不登校経験を持つ生徒や長期欠席等が原因で高校を中途退学した者等を主に受け入れる総合学科・三部制(午前部・午後部・夜間部)の高校で、他部履修により3年での卒業も可能とする。(東京都教育委員会より)
SちゃんとMちゃんに会うのは実は約3年ぶり。今年の年賀状がきっかけで、Mちゃんに湯島天神の合格守りを届けに行ったのですが、そのときに、「セッキーが来るなら」(彼女たちは私のことをセッキーと呼ぶ)と、わざわざSちゃんもMちゃんのところに来てくれたのです。
この3年で、元々の好奇心はそのままに、ちょっと大人びて落ち着いたお嬢さんになったMちゃん。
X高校のパンフレットを私に見せながら、受かったらこの授業を取りたい、こんなことを学んでこんな進路を描いている、なんて話をしてくれたMちゃん。
一方で「でもまずは毎日、教室に着くことを目標にする」と現実的なことも言ってみたりしながら、やはり受験前でどこか不安そうです。
そこに登場したSちゃん。この3年で自由な感じのお嬢さんになった彼女。なんか明るくなったなー、良かったなーと思いつつ、「元気だった?」なんて話をしていたのですが。
Sちゃん、Mちゃんが開いていた(自分が通っている)X高校のパンフレットに気づき、学校について、Mちゃんにいろいろ説明をし始めます。
学校の設備から始まって、科目の履修の仕方、パンフレットの写真の人物についてなど、本当に学校のことをよく知っているのです。
Sちゃん、正直「何色をオーダーするとその髪色になるんですか?」という感じの外見。生きる力の強い子ですが、学校とか固い枠の中にいるのは苦手な子だと思っていたので、
「え?学校行ってるの?」
と思わず言ったところ、
「行ってるよ。毎日。授業は聞いてないけど」
とのこと。
否あなた、今のあなたの説明を聞く限り、結構授業も聞いてるし勉強してる感じするよ、と思いながらSちゃんの話を聞いていました。
Sちゃんなりに、Mちゃんに頑張ってほしくて学校の話をしている様子です。
そんな中、Sちゃんがある選択授業について、話してくれました。
「この授業は取った方がいい」
から始まり、
「でもさ、この授業取ると、勉強しなきゃなんないんだよね」
「授業の最初に、自分はどこを勉強するか決めて、そこを勉強して、それを授業の最後に、人に教えるの」
「自分があやふやにしかわかってないと教えられないじゃん」
「だから、人に説明できるように自分で勉強するの」
「それで、説明できなかったところをまた勉強するの」
「先生が話す間、わかってもわからなくてもただ座ってるより絶対いい」
とのこと。
思わず、
「それ、リトリーバル学習(※2)だよね」
と言うと、
「はぁ? だから●●って科目だよ」
と全力で怪訝な顔をしながら、否定。
そりゃそうだ。Sちゃんにとっては、ある選択科目について話しているわけで、学習法について興味がある訳じゃない。
※2:リトリーバル学習:思い出すべき情報を記憶から呼び起こす学習方法(カリフォルニア大学サンディエゴ校心理学部Webサイトより)
「学んだ内容を人に教えると自分の学習が深まる」は、まさにこのリトリーバル学習によるもの
(参照:【リトリーバル学習】少ない労力で成果を得る方法)
先生としたら、個別対応でリトリーバル学習を指導するより一斉講義をする方が楽だろうと正直思います。
しかし、チャレンジスクールに入学する子たちが、ただただ先生の話を座って聞くということが苦手・不可能であろうことも、確かに容易に想像がつきます。
X高校、繰り返しますが都立のチャレンジスクールです。
批判されることも多い公教育ですが、生徒の学びのためにこんな取り組みをしてるんだ!と、新たな発見をしました。
この授業、見学に行ってみたいなぁ….。
そうつぶやいた私に、
「はっ?何言ってんの?っていうか相変わらずセッキー、変なものに興味持つよね」
と言い放つSちゃん。
でもね、その授業を何より楽しそうに話しているSちゃん。あれほど小・中学校の勉強が嫌いだったSちゃんが楽しそうに勉強の話をしていることが、何よりの成果だとセッキーは思うよ。