新型コロナウイルスに関する情報の伝え方

こんにちは。薬情報コンサルタントの関口詩乃です。

連日連夜、新型コロナウイルス(COVID-19)の話題が多くて落ち着かない気持ちで過ごしている方も多いかもしれません。

 

このような新登場の病気が流行ると、大量のデマが生まれるのは、いつの時代も同じですね。

ところで。

そんな中、先日、2020年3月1日に、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんがYoutubeチャンネルに投稿した動画が、とても斬新でした。

感染拡大防止で休館した吉本の劇場から、厚生労働省の一般の方向けの「新型コロナウイルスに関するQ&A」を、淳さんが1時間かけて朗読!

誤情報が飛び交う中、何かできる事はないかと相談した医師から、「まずはこれ」と教わったのが、この厚労省のQ&Aだったから、ということでした。

 

この動画を医療コミュニケーション的に考えてみました。

 

まず、冒頭で「いつの時点の情報か」「どこが出している情報なのか」を明らかにしています

状況が刻々と変わり、情報も更新されていくときには、「いつの時点の情報か」わからないと、「昔は正しかったけれど今はガセネタ」みたいな残念なことも起きてしまいますが、いつの情報かがはっきりしていることで、誤解を防ぐことができます。

また、「情報の発信源」を明らかにすることで、情報の信ぴょう性を判断したり、元情報に戻ることができます。

 

次に、厚生労働省のQ&Aを改変せずに、ほぼ原文通りに読み上げています。

改変することで、わかりやすくなる場合もありますが、伝える人の感情や考えが入り込んでしまい、情報が不正確になることもあります。

原文通りに読むことで、情報が意図せず変質するのを防いでいます。

 

更に、これを、NHKでもなく、厚生労働省でもなく、タレントの淳さんがYoutubeチャネルで流したことです。

薬剤師である私が知っているように、少なくとも専門家は、国がどこに公式見解を載せ、厚生労働省がどんな情報を発表しているか知っているし、どこにそれらの情報があるかも把握しています。

そして、そのような情報は、公表されているんだからみんな知っているし、必要なら見るはず、と、どこかで無意識に思っています。

しかし、私が他業界の情報をほぼ知らないように、医療関係者以外の人にとっては、そもそも情報がどこにあるかから知らないのは当たり前です。

それを、著名人の淳さんが動画で流したことで、医療関係者以外の人達にも、文章ではなく動画や音声で情報を仕入れるタイプの人達にも、「こういう情報がある、ここを見に行けばいい」と伝え広げることができたと思うのです。

 

一方で、専門家の出す情報の限界を感じたのも事実です。

これらの情報は、正しい情報を取り間違いのないように伝える必要があります。

 

しかし、「正しい情報」を遵守するためには

そもそも、「不確定情報が多い中では、伝えられる情報はごく一部になってしまう」「根拠のない情報は載せられない」「どれだけ気をつけても、結果として後から見ると正しくなかった、ということも起こりうる」

ため、「情報を隠している」「国は情報を操作している」という陰謀論の根拠にされてしまうことも怒り得ます。

「海外の情報では・・・」という話をする人がいますが、情報発信元により、どのくらいの信ぴょう性や正確さで伝えるかの基準が違います。

突き詰めると、「どのくらい何を信じて、自分はどうするかを自分で決める」という伝える人よりも受け手の情報に対する責任と行動の覚悟に行きつくのかもしれません。

 

次に、「取り間違いのないように伝える」ですが、ロンブーチャンネルの淳さんの↑の動画を聞いていて思いました。

「耳で聞くと、このQ&A、こんなに難しいのか」って。

 

意味が一種類にしかとれない文章を書くことは、意外に難しいです。

例えば、

「副作用ではないかと思われる」

という文章は、

「副作用ではない、かと思われる」

「副作用ではないか、と思われる」

と、句点を打つ場所が一文字分変わるだけで、意味が反対になってしまいます。

このような取違いを防ぐための文章は、ファジーではない分、少し、とっつきにくい印象を与えてしまいます。

 

しかも、医学用語や熟語なら一言で済むことでも、単語の意味が解らなければ何の役にも立ちません。

しかし一方で、わかりやすく伝えようとして文章が長くなりすぎると、読んでもらえなくなってしまいます。

 

日本語は、文字を読めば漢字から意味を推察することができます。

例えば、

「問2 新型コロナウイルスは、コウモリ由来というのは本当ですか?」

の「由来」。

目で文字を見ていれば「来る」という漢字が入っているので、

「コウモリから来ているって意味だな」

となんとなく理解できるのですが、

これを耳で

「しんがたころなういるすは こうもりゆらいというのはほんとうですか」

と聞くと、一瞬「こうもりゆらいって何?」「こうもり?」「こうもりゆ らい?」等々考えてしまい、その間に文章が先に進んでしまうことがあります。

 

更に、少なくとも淳さんは、インテリジェンスの高い方だと思います。

その淳さんが、恐らく朗読前に一度は目を通したであろうこのQ&Aを読んでも、

「すんなり読めない」、「読み方に悩む」、「意味が一瞬わからない」

言葉がときどき出てきている様子でした。

 

文章の長さとわかりやすさ、正しさのバランスは永遠のテーマです。

そして、厚労省も考えて考えて作った文章だと思います。

それでも、「耳で聞くと難しいなぁ」と思ってしまいました。

 

 

だがしかし、なのです。

それでも、淳さんがこれを動画にして朗読した意味はあります。

こういうものがある、ということを世間に広げることで、

知りたいと思えば、

あるいは

聞いててわからなかったけどどういうことだろうと疑問に思えば、

元情報であるQ&Aに行くことができるからです。
(実際、当該動画の概要には厚労省Q&Aのリンクが張られています)

 

医療コミュニケーションをテーマに生きる自分にとって、いろいろなことを考えた動画でした。

淳さん、ありがとう♡

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