特発性過眠症のこと ー病気だと気づきにくい病気ー

こんにちは。薬のあらゆる「?」を解決する薬相談の専門家、
薬情報コンサルタントの関口詩乃です。

突然ですが私、「特発性過眠症」という病気を持っています。

文字通り寝すぎてしまう、というよりも「起きていることが難しい」感じです。


何時間寝てもスッキリしませんし、睡眠時間が長いので、
活動時間が短くなってしまいます。
電車で寝過ごしたり、
大事な局面でも寝てしまったりもしょっちゅうです。

病気の名前自体が「特発性」=「原因不明の」なので、
原因もわからず、治療(主に薬)も起きていられるように、
目を覚ます、覚醒させる系の薬を使います。

 

今は比較的安全な薬が使われていますが、
それらの薬が出てきたりある程度効果があるとわかるまでの時代や、
今でもそれらの薬が効かないときには、ヒロポンまで使われる、という病気です。

 

あ、因みに。
覚せい剤のことを「ヒロポン」と言ったりしますが、
いまでも「ヒロポン」という医療用の薬は存在しており、
中身はもちろん覚せい剤です。覚せい剤の隠語じゃないんですよ。

この病気の診断は、時間と手間がかかります。
まず、この病気を知っている医師が少ないです。
更に、ようやく専門医にたどり着いても、
「他の病気を除外していった結果」
なので、診断までにはいろいろな検査をすることになります。

・・・否、そもそも。
「起きていられない」を「病気」だと認識することは、
とても難しいです。

考えてみてください。
「眠れない」ことが「不眠症」という病気であり、
「睡眠薬」という薬があることは広く知られています。

あなたが会社の同僚に
「最近眠れなくて・・・」と言われたら、
少なくとも心配するし、場合によっては医療機関にかかることを勧めませんか?

でも、
「最近、寝すぎちゃうんだよね」「最近、起きてられなくて」って、
言われたら、心配しますか???
医療機関の受診、勧めますか?
良くても
「疲れてるんじゃない?」
「今度の休日、ゆっくり休んでね」
くらいの返事ではないですか?

「私も眠い」
「みんなそうだよ」
そんな返事をしますよね。

私自身、何年か「うつ状態」でお世話になっていた先生(精神科医)に、
話の流れで、たまたま
「大学入試のセンター試験で眠りこけた」
「新卒で入社した会社の入社式で、社長講話で眠りこけた」
「転職した際の人事担当者との小部屋の1対1の研修で眠りこけた」
というエピソードを話していて、
(というよりも、最初の「センター試験・・・」で、先生が疑問を抱いて「他にもありますか?」と訊いた。)
「ねぇ、関口さん、それ、普通じゃないよ」
「それ、うつ状態じゃなくて、過眠症の症状や二次障害じゃない?」
と言われても、それは「体質」「気質」「だらしなさ」であり、
「病気」だなんて思いもしませんでした。

その後、睡眠の専門医を紹介され、
過去のことや現在のエピソード、それらを見ていた(いる)人の反応やコメント、
夜間睡眠の状況などから睡眠時無呼吸症候群等の
「夜間眠れないことによって起きる昼間の耐え難い眠気」を除外して、
検査でナルコレプシーを除外しつつ、過眠症の診断に至ったのです。

医療人で、多くの情報にアクセスして理解もできて、
判断もできる自分でも、
「特発性過眠症です」
と言われたとき、
それを自分の中で納得するのも、
納得した後受け入れるのも、
結構な時間がかかりました。

そして、今は思います。
「これって、自分だけじゃないよね」
「『え?病気?』と思うような、知られていなかったり、
普通と病的の区別があいまいな病気や障害も、同じように、
理解されにくかったり、自分で認められなかったりするんじゃないかな」
と。

例えば大人の発達障害で、じっと座っていられなかったり、相手の気持ちがわからなかったり。
例えばソバや青魚などではない、マイナーな食品のアレルギーなど。

逆に、うつ病のように、昔は「気のせい」「努力がたりないから」
と誤解されていた病気も、
病気への認知と理解が進んだ今は、
だいぶ理解を得られるようになった疾患もあります。

ちょっとした理解と受容が自分に必要だったように、
それらを必要としている人の手助けができたらなぁと思います。

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