進化や進歩はメジャー化の恩恵

こんにちは。
薬情報コンサルタントの関口詩乃です。

 

20年以上前、友人Bが原因不明の発熱や腹痛、下痢などでA病院に入院しました。
Bさんと親しかった私は、よくお見舞いにいたものです。

いろいろな検査をしても、Bさんの症状の原因がわからずにいました。
何の病気かわからなければ、治療の方針もなかなか立ちません。

結局、Bさんがクローン病だと診断されたのは、入院から3か月以上経ってからのことでした。

クローン病とわかってからも、炎症症状がなく落ち着いた状態(寛解(かんかい)と言います)にもっていくまで、治療も試行錯誤が続きました。

 

ところが先日、A病院に行ったときのことです。

エレベーター横の院内案内を見て、
「こんなにも進化するものか。。。」
と、驚きと感動が胸に広がりました。

 

というのは、消化器センターに

「炎症性腸疾患センター」

が併設されていたからです。

 

炎症性腸疾患というのは、「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」という、2つの難病の総称です。

(※難病というのは、原因が不明で、治療法が確立されていない病気のことです)

 

20数年前、あんなに調べてもなかなか診断できず、治療もあんなに進まなかったのに、今は専門のセンターが立ち上がっている!!!

 

隔せの感というか、感慨ひとしおというか、、、でした。

 

20数年前のA病院がヤブだったわけでは決してありません。
当時から炎症性腸疾患を専門としている先生がいるにはいらっしゃいましたが、当時は大学病院の他、ごく一部の病院に専門医がいるのみ、という状況でした。

 

ところが、今や、A病院のような私立の普通の総合病院にも炎症性腸疾患センターがあり、研究がなされ、最新の治療を受けられるのだ、と、医療環境の進歩を思ったのです。

 

これにはもちろん理由があります。

当時のクローン病の患者数は1万4000人弱。
翻って現在のクローン病の患者数は4万人以上です。
難病情報センターより)。

 

研究されることで、今まで「原因不明の下痢や腹痛」と言われていた患者に診断がつき、
診断がつくことで患者数が増え、
患者数が増えることで治療法が研究・開発され、
治療法が研究・開発されることでその分野を専門とする医師が増え、
専門医が増えることで患者の治療が進みやすくなるとともに研究も進み、
研究が進むことで診断が容易になり・・・と、
「治療の輪」が大きくなっていきます。

進化や進歩はメジャー化の恩恵でもあるのだと思いました。

 

もちろん、患者数の少ない病気(希少疾病(きしょうしっぺい))を置き去りにしてよい、ということではありません。

クローン病の現在の状況も、国の対策事業の研究班による成果のひとつです。

 

「患者数が増える」ということを
「悪いこと」「現代人は・・・」という文脈だけで捉えなくても、
そこには理由もあり、明るい側面も恩恵もある。

という当たり前のことを、昔の記憶とともに思いを新たにし、
同時に、

20年という時間は、医療の常識を変えるには十分すぎる時間だ。

と実感した、というお話でした。

 

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