インパルスの堤下敦さんが牛乳で睡眠薬を飲んで朦朧状態で車に乗っていた件

こんにちは。
薬情報コンサルタントの関口詩乃です。

「お笑いコンビ「インパルス」の堤下敦(つつみしたあつし)さんが、意識が朦朧(もうろう)とした状態で車の中で発見された(NHK NEWSWEB)」というニュースを見て驚きました。

堤下さんは、銭湯に行ってサウナに入った後、睡眠薬を抗アレルギー剤と一緒に牛乳で飲んで、朦朧とした状態で車を運転した、ということです。

何より、事故にならず、ご本人もケガもなく、誰かが巻き込まれることもなかったのは幸いです。

堤下さんが睡眠薬を飲んで朦朧状態で車に乗ったのは自己責任か?

堤下さんが睡眠薬を飲んだ後、朦朧状態で車に乗ったことについて、堤下さんご本人の意見を他のニュースの情報なども合わせて見てみると、

初めての薬だった」

「医師からは運転前に飲まないように言われていたし、説明もいろいろされていたが、インターネットで調べたら、効果が出るまで多少時間があるという情報があったので、家に帰ってすぐに寝たかったので、運転前に薬を飲んだ。銭湯から家まで10分足らずだからいいだろうと思った」

「運転中の記憶が途中からない。その後の記憶も断片的」

とのことです。

 

「医師の説明よりもインターネットの情報を信用したから悪いんだ」

と本人の自己責任で終わりにするのは簡単ですが、それでは何も解決しません。

 

薬情報コンサルタントの私が想像するに、堤下さんは、痒くて、ずっと眠れなくて、辛かったんだと思うんです。
しかも1か月の間、アレルギーを抑える薬をいろいろ試したけれど思うような効果が出なかったんだと思うんです。
それらのことがあってからの睡眠薬なので、堤下さんは、今度こそ効いてほしい、効くように飲みたい、と思ったと思うんです。

 

堤下さんは、(薬をもらうときに)「初めての薬なのでいろいろ説明してくれた」と言っています。

おそらく、堤下さんに対していろいろな説明がされたと思うのですが、睡眠薬のように、「あぁ、寝るための薬ね」と、ある意味、理解した気になってしまう薬の説明は、スルーされやすい可能性があります。
しかも、病院や薬局は、長居したい場所でもありませんし、具合が悪ければ理解力も集中力も下がりますし、一刻も早く家に帰りたいと思うのも当たり前です。
さらに、これまでのアレルギーの薬がうまく効かなかったとなれば、説明を聞く気持ちが下がるのも仕方がないです。

でも、医療者にとっては、「説明したから伝わってるはず」と、どこかで思っているんですよね。

 

一方、薬情報コンサルタント(医療に関わる人間)として堤下さんに対して思うのは、やっぱり

「なぜ、睡眠薬を飲んで車を運転するんだ!」

です。

 

堤下さんに限らず、睡眠薬を飲んだ時には慎重になってください!

睡眠薬は人によって効果の強さに差があるし、初めて飲むときには慎重になってほしい

と思います。

むしろ、睡眠薬を飲むときに、効くかどうかを不安に思う人よりも、睡眠薬を飲むこと自体やそのことで生じる副作用や依存(やめられなくなるのでは?など)を心配し、飲んだ方が楽だし早く良くなるのになぁと思っても、睡眠薬は嫌だとおっしゃる患者さんの方が多い、という印象すらあります。

 

だからつい、患者さんも睡眠薬を初めて飲むときには慎重になってくれるはず、むしろ慎重になりすぎて飲まない、なんてことが内容にしなきゃ、と思ったりするのですが、これも私の思い込みなんだと今回の事件で知りました。
医療関係者にとって「常識」で「当たり前」でも、患者さんにとっては当たり前でも何でもない、というギャップに、もう少し敏感になろうと思いました。

 

堤下さんの言う「途中から記憶がなくて、その後の記憶も断片的」は、まさに睡眠薬によるものです。

一過性前向性健忘(いっかせいぜんこうせいけんぼう)と言って、薬を飲んだ後にした行動を覚えていない状態が起きることがあります。
行動しているのだから、意識はあったはずなのですが、そのときのことを覚えていない、記憶を失ってしまっている状態です。

過去に、ハルシオンという睡眠薬では、この一過性前向性健忘により、殺人事件まで起きています。
犯人がハルシオンを飲んでから殺人事件を起こし、そのときの記憶がない、というものです。

 

薬について説明、とくに副作用について説明しすぎると、患者さんが怖がって薬を飲まなくなるから気を付けなければいけない。

なんていうことを言われることもあります。

ですが、説明はやっぱり必要なんだと、今回の件で改めて思いました。

 

「どうしたら、インターネット情報よりも、医療者の説明を信じてくれるようになるんだろう?」

医療者の課題ですね。

 

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