
こんにちは。
薬情報コンサルタント・薬剤師の関口詩乃(せきぐちしの)です。
だいぶ前、話を振ったままになっていた、睡眠薬の「これって本当?」のお話しです。
睡眠薬に対する誤解
薬に関する相談でも、割とよく、しかし、飲み会の最中ではなく、
帰りの電車の中などでよく訊かれるのが、睡眠薬の話です。
「かれこれ○年、△△という睡眠薬を飲んでいるんだけど、続けても大丈夫?」
「やめられなくなったりしない?」
「お母さんが飲んでるんだけど、頭がボケたりしないの?」
「だんだん量が増えていくんでしょ?」
「最後はマイケルジャクソンみたいに、睡眠薬で死んだりしないの?」
睡眠薬って、不安に思いつつ飲んでいる人が多いんだなぁと、毎回思います。
更に言うなら、誤解の多い薬だなぁ、と思うのです。
今の睡眠薬って、恐らく、あなたが思っているよりも安全です。
自分で勝手に増やしたり、お酒と一緒に飲んだり、
(トリップしようなどの)悪用をしなければ、まず、問題ありません。
「だって、マイケルジャクソンは睡眠薬で死んだんでしょ?」
うーむ。。。
マイケルジャクソンが使っていた「プロポフォール」という薬、
皆さんが思う「睡眠薬」とはだいぶ違う薬です。
睡眠薬ではなく、正確には「麻酔薬」です。
同じ眠らせるための薬でしょ?
うーむ。。。
毎日の睡眠のための薬と、手術のために強力に一時的に意識を消失させる薬は、
かなり違います。
そもそもプロポフォールは注射ですし、常に医師が注意しながら使う薬です。
眠れないから、と言って使う薬ではありません。
「でも、睡眠薬の量がだんだん増えていって、飲みすぎると死ぬっていうじゃないですか!」
今でも、残念ながら、睡眠薬の大量服用で自殺を図る方もいらっしゃいます。
しかし、今のベンゾジアゼピン系と言われる睡眠薬や、
その後に登場した睡眠薬は、非常に安全性が高いです。
睡眠薬の安全性について、データを用いてお話したいと思います。
データで見る!睡眠薬の安全性
睡眠薬が、どのくらい安全かと言うと。。。
安全性を調べる動物実験で、動物に体重あたり何mgの薬を投与したら、
半数の個体が死んでしまうか、ということを表す、LD50という指標があります。
例えばレンドルミンという睡眠薬の場合、このLD50という数値が求められていません。
この薬の成分を、ラットに体重あたり経口で7g、直接腹腔内に1g以上入れても、
半分以上のラットが生きていたため、数値が求められていないのです。
これ、単純比較はできませんが、仮に体重50kgの人間で考えると、
一度に350g程飲んでも生きていた、ということです。
レンドルミンは1回1錠、0.25mgのお薬が入っていますから、
350gを錠剤にすると1400錠。
普通に飲んでいる限り、まず死ぬことはない、とおわかりいただけましたか?
「睡眠薬は怖いから飲まないと言って、眠れないのを我慢するよりも、
我慢せずに薬を飲んで十分な睡眠をとった方が身体にいい」
と思って睡眠薬は処方されています。
基本、薬は飲まないに越したことはありませんが、
まず、眠って身体や心を整えることが必要なときもある。
そんなことを、どこかで思っていてくれるといいな、と思います。