
こんにちは。
薬情報コンサルタント・薬剤師の関口詩乃(せきぐちしの)です。
「健康診断の結果、生活習慣病と診断され、薬を処方され不安になった」という経験はありますか?
今回は「生活習慣病で薬を処方されたとき、どう考えればよいか」
についてお話してみたいと思います。
生活習慣病の解決策は薬か?
ここ数年、35歳くらいの男性から、よく訊かれるのが、
「健康診断の精密検査の結果、生活習慣病(糖尿病・高脂血症・高尿酸血症・高血圧など)
って言われて、薬を出されたんだけど、どう思う?」
というものです。
この「どう思う?」という言葉には、
「薬が必要なほど、俺って既にヤバい状況なの?」
「いきなり薬じゃなくて、まず生活習慣の改善とか指示されるんじゃないの?」
「すぐに薬を出す先生ってどうなの?」
など、いろいろな意味を含んでいます。
「検査値、どのくらいだったの?」と聞き返すと、
「血糖値が・・・、中性脂肪が・・・」等々、
皆さん、ご自分の検査結果を、よく覚えていらっしゃいます。
その口調には「薬が必要なほど、高い値じゃないでしょ??」
という気持ちが見え隠れしています。
さらに話を聞いていくと
①何年か前に、初めて健康診断でひっかかり、「要再検査」「要精密検査」となった。
②特に体調も悪くないし、忙しいので、そのまま放置。
③「再検査や精密検査を受けてください」と催促され、再度受診する。
その結果、「異常なし」「経度の異常のため経過観察」と言われ、安心する。
④翌年以降の健康診断でも①〜③を繰り返し、 だんだん、「異常なし」から「経過観察」になる。
さらに「ちょっと数値が高めなので、食事に注意して運動を心掛けましょう」と言われる。
毎年のことだし、特に不調もないので慣れてしまい、気にしなくなる。
そして「まだ病気って言われたわけじゃないから」
「基準値は超えているけど、たまたま忙しい時期に検診を受けただけだから」
と自分の中に「たまたま数値が悪かった」理由を作り出す。
⑤ある年、再検査の結果、「治療が必要です」と薬を処方される。
というパターンが多いです。
どうやら、実際に「薬」をもらうことで、
「自分が健康な状態ではない」と宣告された気持ちになっているようです。
そして、それを認めたくない。
生活習慣病の解決策は薬?食事?運動?
「薬は飲みたくない」と多くの人は言います。
当たり前です。
身体に影響を与えるものは、一歩間違えれば身体にダメージを与えるもの。
「薬」は「毒」と紙一重です。
身体に対するダメージよりも、
治療効果の方が大きいと判断されたものを「薬」と呼んでいるに過ぎません。
病気をそのままにするリスクよりも、薬の効果の方が大きいと考えるから、
人は薬を飲むのであって、必要以外の理由で飲むものではありません。
では、彼らは本当に薬が必要なのでしょうか?
いきなり薬を出すのではなく、まず食事や運動に気をつけてみるべきなのでしょうか?
ここで、気づかなければいけないのは、
「実は、何年も健康診断で異常値が出ながらも、生活を改善してこなかった」
という事実です。
また、深夜業の特定健診を毎回受けている方や、猛烈に働いている方であることも多く、
「そもそも、食事に気を配ったり、運動習慣を持つことが現状では難しい」
ことも多いです。
個人の状況や状態の違いがあり、一概には言えません。
しかし、彼らのほとんどが、第一選択と言われる、
「この病気はまずこの薬で治療してみよう」と考えられる薬を、
1種類だけ、最低用量で処方されている。
しかも、結果として薬が増えることなく、ずーっとそれだけを処方されていることからも、
「検査値がとても悪いから薬を出されている」というより、
「異常値が続いていて、かつ、
生活習慣の改善などが望めないから、薬を出されている」と考えられます。
もちろん、処方したお医者さんに聞いたわけでもないので、推察にすぎません。
しかし、薬を飲むのがどうしても嫌なら、先生に
「生活習慣を変えて数値が下がるか、半年くらいチャレンジしてみたい」
と相談してはどうでしょうか?
もしくは先生に、「薬を飲むほど自分は重症なのか、とっても気になっている」
と伝えてみてはどうでしょうか?
「薬を飲む=自分は不健康だ/病気だ=自分は不幸だ」
という思い込みを外してほしい。
そして、「健康でいるための方法のひとつとして、薬による治療を選んでいる」
と思ってほしいと願っています。