風邪薬成分の原料を中国産で水増ししていた話

こんにちは。
薬情報コンサルタントの関口詩乃です。

先週、「風邪薬や解熱鎮痛薬の成分で、原料メーカーが中国産を混ぜていた」というニュースが話題になりました。

さて、何が起きたのでしょう?

最初の「風邪薬や解熱鎮痛薬の成分」は、「アセトアミノフェン」というものです。
カロナールやタイレノールなどはこの「アセトアミノフェン」を主成分とするお薬です。
薬局で売っている「風邪薬」の多くにも入っているため、「風邪薬の成分」とニュースでは紹介されることも多いです。

製薬会社では、薬を作るとき、
1.薬の成分(原薬:薬の原料)自体を自分たちで作る
場合もありますが、
2.原薬メーカーなど、他の会社に原薬を作ってもらう
3.原薬メーカーが販売している原薬を買う
ことも多いです。

1,2.は、医療用医薬品の特許期間内など、
「特定のメーカーの特定の薬のための原薬」
をオーダーメイドしている状態です。

一方、3.は、
OTCやジェネリックが出ている薬など、
広く一般的に使われている成分の原薬を、
その成分の入った薬を作っている会社に販売します。

今回は、3.のパターンです。
広く使われているアセトアミノフェンという成分を原薬メーカーが作り、いろいろな製薬会社に販売していました。
その製造していた原薬のアセトアミノフェンについて、
「自社で製造したアセトアミノフェンに、安価な中国製のアセトアミノフェンを混ぜていた」
「数年前から1-2割、混ぜていた」
ということです。

ただ、同時に
「品質に問題はなく、他の製品と比べて副作用の増加なども見られておらず、安全性にも問題ない」
とされており、厚生労働省は
「安全上のリスクは特にないと判断しており、既に市場に流通している製品の回収なども必要ない」
としています。

 

品質に問題がなかったからこそ、何年間もバレなかったのでは?と思いますが、品質にも安全性にも問題がないなら、何が問題なんでしょうか?

一言でいうなら、

「法律(※)に違反していること」

です。

※:薬機法:医薬品医療機器等法。薬事法が改正により名称変更。正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」

 

薬機法では、薬の品質や安全性を担保するため、薬の原料や製造方法を届け出る必要があり、届け出た内容は、勝手に変えてはいけないことになっています。
さらに、届け出た内容で製造されていることを担保するために、製造記録をつけることが義務付けられています。

今回の事件は、認可されていない中国産アセトアミノフェンを自社品に混入し、
しかも、製造記録もほとんどない、という悪質なものです。

「品質にも安全性にも何も問題がないならいいじゃないか」

ではなく、

「たまたま、問題が起きなかった」

だけなのです。

 

「モノがちゃんとしているなら問題ない」

ではなく、

「不良品や危険なものを作らないためのしくみを担保すること」

を法律は求めているのです。

今回のケースも、中国産原料の使用そのものが日本で禁止されているわけではありません。

中国産のものをブレンドすることをあらかじめ届け出ており、製造の記録もあったのであれば、法的には問題ありません。

 

今回、不正に手を染めた理由として

・生産が追い付かなかった
・製造コストの引き下げを図った
・生産量を上げるためだった

などの理由が出ています。

自社で製造するよりも、中国産を購入した方が安い、ということにまず驚きました。

そして、そもそもは(コスト引き下げよりも)生産が追い付かなくて水増しした、ということなんだろうと思うと、決して許されることではありませんが、
国産アセトアミノフェンのシェア8割を持っている会社が、それだけギリギリの環境で作っているんだということにも驚きました。

そして、そのような環境が、法律順守から遠ざけてしまったのかな、と思うと、とても残念です。

でも、何より、健康被害がなくて本当によかった!!

 
 

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